2019年8月26日2023年11月29日大学教授に学ぶ正しい化粧品の知識

美容&スキンケア情報「みずみずしいうるおいのある素肌 角層アミノ酸」

状態の良い角層の2番目の条件は、NMF (Natural Moisturizing Factor)が十分に産生されていることです。

 

NMFは天然保湿成分または天然保湿因子と呼ばれ、角層の保湿機能に重要な働きをしている水溶性の物質です。

 

アミノ酸類を中心に、ピロリドンカルボン酸や乳酸塩などが含まれています (図1)。

 

水分を失った角層は硬くなりカサカサになりますが、水分を与えると柔らかくなります

 

この水分を保持する成分がNMFです。

 

▶関連記事:水分補給と美肌の関係性

 

 

NMFが十分に産生された角層は、水分を保持することができるので、肌はうるおいを保つことができます

 

 

天然保湿成分NMFの構成図

 

 

角層の下部に接する1~2層の扁平な形をした顆粒細胞から成る層を顆粒層といいます(図2)。

 

顆粒細胞の中には2種類の顆粒{ケラトヒアリン顆粒と層板顆粒(ラメラ顆粒)}がたくさん存在してします。

 

顆粒層(人の表皮浅層の組織)の構図

 

ケラトヒアリン顆粒には、フィラグリンの前駆物質であるプロフィラグリンと呼ばれるタンパク質が蓄えられています。

 

角化するときに脱リン酸化とプロテアーゼの作用によってフィラグリンに分解されます。

 

フィラグリンは細胞質内でケラチン線維を凝集させます。

 

その後、フィラグリンはカスパーゼ14やカルパインなどのプロテアーゼの作用でペプチドやアミノ酸に分解されます。

 

角層中の遊離アミノ酸の組成がフィラグリンを構成するアミノ酸の組成に近似することから、NMFとしての角層中アミノ酸の供給源がフィラグリンであると考えられています。

 

尋常性魚鱗癬というさめ肌を呈する遺伝性皮膚疾患では、フィラグリン遺伝子が変異して、フィラグリンが非常に低いことが知られています。

 

また、アトピー性皮膚炎の約30%はフィラグリンに異常があり、フィラグリンの低下がアトピー性皮膚炎の発症リスクにもなると考えられています。

 

 

層板顆粒には、角質細胞間脂質の素が蓄えられています。

 

角化にともない角層が形成される際に細胞外に分泌され、角質細胞周囲を取り巻く角質細胞間脂質を形成します。

 

セラミドは層板顆粒から放出され、遊離脂肪酸は顆粒細胞の細胞膜から生成されます。

 

 

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角質細胞の角化が十分に行われず、扁平化していない未熟な角質細胞が形成されている肌では保湿機能やバリア機能が低下しています。

 

そうような肌では、角質細胞中のNMFや角質細胞間脂質などが少なく、その結果、水分を保持する機能やバリア機能が低く、角層はうるおいを失って、肌あれが引き起こされると考えられています。

 

▶関連記事:美白効果”と”肌あれ改善効果”を併せ持つトラネキサム酸

 

 

また、角層の表層の水分が不足すると、正常な角層剥離をつかさどるトリプシン様酵素、キモトリプシン様酵素などのタンパク質分解酵素が働きにくくなり、表層の角層細胞の剥離もスムーズに行われなくなるため、角層が厚くなってくすんだ肌になります

 

角層は、健やかな皮膚の働きを保つために大切な役割を担いっているだけではなく、美しさや若々しさの実感につながるため美容的にも大切です。

 

 

ですから、みずみずしいうるおいのある素肌を保つためには、健やかな角層をつくり、維持することが重要なのです。

 

健やかな角層をつくるためには、その前段階の顆粒細胞が健やかな状態でなければなりません。

 

▶関連記事:みずみずしいうるおいのある素肌 “ 皮膚とpH 水”とは

 

 

オリーブ油やツバキ油に含まれるオレイン酸にはフィラグリンの産生を増やす作用があることが報告されています。

 

乾燥肌の人がこれらの油分を使ってスキンケアすると肌荒れを防げるのは、エモリエント効果に加えてフィラグリンの産生増加も関与しているのかもしれません。

 

角層の保湿機能の弱い人は、健やかな角層を維持するために、水分・油分・保湿剤をバランス良く配合した化粧水・乳液・クリームによるスキンケアによって角層の保湿機能・バリア機能を補うことが必要です。

 

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この記事を書いた人

前田 憲寿 先生

前田 憲寿 先生

*医学博士

*東京工科大学 応用生物学部 教授

*日本スキンケア協会 顧問

*特許庁 機能性皮膚化粧料調査委員会 委員長

九州大学大学院薬学研究科、東北大学大学院医学研究科を経て、資生堂ライフサイエンス研究センター皮膚科学研究所にて主任研究員を務める。2007年に東京工科大学バイオニクス学部教授、バイオ・情報メディア研究科教授に就任。2008年より、同大学応用生物学部、バイオ・情報メディア研究科教授に就任。専門分野は、香粧品科学、皮膚科学、分子細胞生物学、生化学、薬理学など。テレビなどのメディア出演も多数。

 

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