2025年10月24日2025年10月24日カウンセリングテクニック
カウンセリングの話し方:不安を解消し、自己理解を深めるための技術とコツ

カウンセリングは、しばしば「心の病気にかかった人が受けるもの」あるいは「話を聞いてもらうだけで意味があるのか」といった誤解を持たれがちです。
しかし、本来のカウンセリングは、相談者が抱える問題や悩みに対して専門的な知識や技術を持つカウンセラーが行う、問題解決の援助と人格成長の援助を主目標とした人間関係です。
本記事では、クライアントが安心して「話す」ための心構えと、カウンセラーが実践する専門的な「聴き方・話し方」のコツを解説します。
カウンセリングの基本と「話すこと」の目的

カウンセリングの場で「話す」という行為は、単なる情報伝達以上の意味を持ちます。
「話すこと」がもたらす効果
自分の考えや気持ちを他者に伝える自己開示は、その内容が相手に受け入れられていると感じることで、ストレスを低減させる効果があると認められています。
この心の浄化作用はカタルシス効果とも呼ばれます。
また、頭の中で考えていることを言葉にして発することによって、自分の内面に生起している感情や思いをありのままに意識・整理することができます。
これによって、これまで知りえなかった自分の性格傾向や考え方に気づき、自己理解を深めることにも繋がります。
何を話せばいいかという不安
初めてカウンセリングに来られる方の中には、「何を話したらいいのかわからない」という心配を語る方が多くいらっしゃいます。
しかし、カウンセリングとは「悩みを話す場」であるよりも、その瞬間、今ここで、表現したい(あるいはできない)ことを共有する場だと捉えることができます。
そのため、語ることができないことも含めて、すべてがテーマとなり得るのです。
クライアントとして「うまく話せない時」の心構えと話し方

クライアントが安心して話すためには、カウンセラーの技術だけでなく、クライアント自身の心構えも重要です。
沈黙を恐れず、沈黙を活かす
カウンセリングにおいて、5分や10分といった沈黙はよくあることです。
この沈黙の時間は、クライアントの中で自己洞察する「動きのある沈黙」であり、心の整理のために必要な時間であるといえます。
カウンセラーは、沈黙の時間を埋めようと焦らず、クライアントの気持ちの整理のために待つことが大切です。
無理に繕わない姿勢
話す内容がまとまっていなくても、あるいは話すことが思いつかなくても、何を話せば良いのかわからない状態でやってきても当然にOKです。
カウンセリングは、ありのままの自分(表現したいこと、あるいはできないこと)を共有し、共に探求していく場なのです。
カウンセラーの専門技術:話を「聴く」ための心構えと三要素

カウンセラーは、クライアントとのコミュニケーションを円滑にし、信頼関係を築くために「カウンセリングマインドの三要素」を基本とします。
カウンセリングマインドの基本と「聴く」姿勢
カウンセリングの基本は、相手の話を「聴く」ということです。
カウンセリングにおける「きく」は、単に音や声が聞こえてくる「聞く」や、訪問したり尋ねたりする「訊く」ではなく、耳を傾けてじっくりと聴く「傾聴」を指します。
カウンセラーは、クライアントの話や考え方、意見が間違っていたとしても、まず「否定、反論」をしてはいけません。
「そう思う」「そう考える」のは個人の自由であると受け入れましょう。
カウンセリングマインドの三要素
心構えの基本は「傾聴」「共感」「反復」の3要素です。
- 傾聴
クライアントの話に耳を傾けることです。
基本的には批判をしたり、話を遮ったりせずに待ち、相手の立場に立って肯定的な気持ちで耳を傾けることが大切です。
- 共感
相手の発言や気持ちを修正したり訂正したりせず、同じ目線で今の苦境を理解しようとする姿勢です。
人は誰かに共感してくれていると感じることで、心が満たされ安心します。
- 反復
クライアントの発言に対して大切なポイントを繰り返して伝えることです。
これにより、クライアントは自分の考えていたことに対して客観的に向き合えるようになり、感情や考え方を整理できます。
「聴くこと」の威力と姿勢
聴き手側の姿勢が、雑談と「語ること」の大きな違いを生み出します。
専門家は「耳ではなく心で聴け」と教え込まれます。
たとえ他覚的に評価できない、量的に計り知れないものであっても、「聴くこと」の威力は間違いなく存在しているのです。
人は話を聞いてくれる人に心を開くという人間の感情の基本を理解することが重要です。
カウンセラーの「話し方・聞き方」のコツ:クライアント中心の関わり方

上手なカウンセラーは、クライアント中心に関わるための特定の話し方・聞き方のコツを実践しています。
カウンセリングはクライアントがたくさん話せる環境を整えることが重要であり、カウンセラーの自分の話はあくまでも二の次です。
クライアントの会話を奪わず、話の軽重を判断しない
カウンセラーは、自分の得意分野や知っている話であっても、クライアントの話を横取りしてはいけません。
カウンセリングは友達との雑談とは違い、自分の話したい気持ちはグッと押さえて、クライアントの話を聞くことに徹しましょう。
また、自分にとって軽い話だと思っていても、相手にとっては重い悩みである場合があります。
相手の気持ちがわからないうちに話を軽んじず、どのような気持ちでそう言ったのか、なぜそんな考え方をしたのかを受け止めてから判断しましょう。
アドバイス・指導のタイミングと姿勢
接客中や会話では、提案やアドバイスを優先しないようにしましょう。
自分の経験から得た答えがあっても、クライアントとあなたは違う人間であり、クライアント流の方法を一緒に見つけ出すことが大切です。
例えば、手作りの化粧水を使っている方に対し、安全性に欠けると頭ごなしに否定するのではなく、まず手作りしようと思ったきっかけを聞き、認めて受け入れることから始めるべきです。
クライアントが明らかに間違っていることを話しても、いきなり正悪を裁かないようにしましょう。
カウンセラーは裁判官ではありません。
例えばメイクを落とさないで寝てしまうなどのケースでは、「なぜ悪いとわかっているのになぜてそうしてしまうのか」を知ることが重要であり、クライアント自身が解消したいと思うように促すことが大切です。
真意を受け取るための質問技術
クライアントの会話の中には、本当に話したい内容のキーワードが潜んでいます。
カウンセラーはそのキーワードをしっかり受け取り、話したい内容に触れるパス(質問)をしなければなりません。
例えば、「友達と北海道に行ったんです」というクライアントには、「お友達」「北海道」の両方のキーワードに触れておくことで、クライアントは自分の話したい部分のパスを受け取ることができます。
他にも、「結婚したら旦那の両親と同居なんです」という話に対し、すぐに「大変ですね」と返すのではなく、「どんなお気持ちですか?」とクライアントの気持ちを伺うことが重要です。
同居を大変だと思っているか、助かると感じているかは、クライアントの気持ちを伺わなければ分かりません。
クライアントの深層心理と適切なアプローチ

クライアントの抱える問題に対し、カウンセラーは指導者としてではなく、クライアント自身が「本当の自分」を見つけ出すようにお手伝いをする役割を担います。
カウンセラーの役割と答えの位置
カウンセラーが一人で答えを見つけ、クライアントに提案をするのではありません。
問題を解決したり、提案したりすることは本来のカウンセリングの目的ではありません。
カウンセラーは、真っ暗な道の中に立っているクライアントの足元を照らし、手を取り、ゴールまで一緒に歩み、エスコートしていく役割です。
カウンセリングは、常にクライアントのペースに合わせて一緒に歩んでいくプロセスが最も大事なのです。
重要な3つのアプローチ方法
- 感情的アプローチ
クライアントさんが抱える感情を理解し、受け入れることに焦点を当てるアプローチです。
感情を探求することで、クライアントの内面理解が深まり、成長や変容の促進へとつながります。
- 認知的アプローチ
クライアントさんの考え方や価値観を理解し、肯定的な考えへと変換するお手伝いをするアプローチです。
ネガティブな自己評価に焦点を当て、感情や行動への影響を探ります。
- 行動的アプローチ
具体的な行動目標やステップを共に考え、良い方向へ導くことを目的としたアプローチです。
否定的な言葉の裏にある真意
カウンセラーは、クライアントの否定的な言葉の裏に隠された真意に気づくことが重要です。
例えば、「この商品って、私はもう年だから無理よね?」という言葉の裏には、「私でもまだ使って大丈夫よね?」という、背中を押して欲しい気持ちが隠れていることがあります。
また、「でも、高いんでしょう?」という言葉の裏には、「もう一歩私の背中を押してくれる付加価値があれば使ってみたい」という気持ちが隠れている場合があります。
不安に思っている項目をどんどん否定して(クリアにして)差し上げることが重要です。
クライアントに選んでもらうことの重要性
クライアントの意志で決定していただくことが重要なため、提案は1つではなく、2つ以上にしてクライアントの意志で選んでいただくようにしましょう。
選ぶものがなければ、「進められた」「押し売りされた」という感覚になってしまう可能性があるからです。
他にも、例えばスキンケアのメカニズム(例:シミができるメカニズム)を延々と説明するよりも、「もし、シミが薄くなったら、どこに出かけたいですか?」など、クライアントが悩みを改善したら何をしたいかという話をする方が、スキンケアに興味を持ってくださり、会話も弾みます。
信頼されるカウンセラーの「話し方」と心構え(集客・リピートへの応用)

次回も来店していただくためには、技術や知識力だけでなく、「また話したくなるスタッフ」になるための姿勢が必要です。
カウンセラーの信頼性は、カウンセリングの質を高め、リピートや集客に直結します。
第一印象の重要性
クライアントは期待と不安を持って来店されるため、サロンに足を踏み入れた時の第一印象が重要となります。
挨拶や笑顔、物腰を柔らかくすることが、不安を取り除くことに繋がります。
また、話し方(声の大きさ、敬語、テンポ、抑揚)でも人柄を判断されます。
人に何か伝えたいと思っている時は、自分がここだけは伝えなければというところを強調して大きな声で話すことで、相手は重要性を感じます。
- 身だしなみ
清潔感、姿勢、目線などを意識し、視覚からの情報を整えます。
- 笑顔
自分が笑顔でいると、相手の気持ちも上がりやすいといわれています。
- 物腰
誰に対しても威圧的な態度をとらず、平等に優しく接する物腰の柔らかさが大切です。
リピーター獲得のための心構え
サロンの繁栄のためには、クライアントに自分のサロンを選んでもらい、ずっと通っていただくことが重要です。
クライアントは、スキンケアなどのサービスだけでなく、カウンセラーに話を聞いてもらいたいという意味でリピート客になってくれることがあります。
普段誰にも話さない悩みをカウンセラーにするわけですから、クライアントの話してくれたことには、どんなことでも、まず「私に話してくださって、ありがとうございます。」と感謝する気持ちを持つことが大切です。
お支払した金額以上の価値を感じなければ、喜んで次回ご来店してくれることも、口コミしてくれることも望めません。
メニューの金額以上のサービスができるように心がけましょう。
さらに、スタッフが「来週来て欲しい」と指導するのではなく、常にクライアント自身の意志で通っていただくことが大切です。
次やらなければならないことを明確に理解していることが、リピートに繋がります。
「やってみたいけどどうしよう」「効果があるか不安だ」という表現は、クライアントが後押しを待っているサインです。
自信を持って「私に任せてください」「一緒にがんばりましょう」といった言葉で、クライアントの背中を押してあげましょう。
ただし、断り文句を言われているにも関わらず後押しをすると、押し売りになってしまうため注意が必要です。
実践で活かせる“心に寄り添うカウンセリング技術”を学ぶには

本記事で紹介したような「クライアントの心に寄り添うカウンセリング力」を、体系的に学べるのが日本スキンケア協会のスキンケアカウンセラー資格講座です。
この講座では、皮膚科学・化粧品科学・心理学の知識を基礎に、お客様の心を理解し、信頼関係を築きながら最適な提案を行うための実践的なカウンセリング技術を習得します。
医師や心理カウンセラーの監修により、単なる会話スキルではなく、「悩みの本質を引き出す質問力」「安心感を与える傾聴力」「行動を促す伝え方」など、サロン現場ですぐに活かせるプロの技術を身につけることができます。
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まとめ
カウンセリングとは、相手の悩みを解決するために“答えを与えること”ではありません。
相手が自らの中にある想いや感情を整理し、自分自身の力で前へ進むきっかけを見つけるための“寄り添いの時間”です。
沈黙や戸惑いの中にも、言葉にならない思いが存在します。
カウンセラーは、その静かな心の声に耳を傾け、クライアントが安心して自分と向き合える環境を整える存在です。
人の心に寄り添い、言葉の奥にある想いを受けとめること――
それこそが、カウンセリングの本質であり、信頼を築くすべての対話の原点といえるでしょう。
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