コラーゲン合成作用のある抗シワ成分「ノイバラ果実エキス」

注目の美容成分　コラーゲン合成作用のある抗シワ成分「ノイバラ果実エキス」

カテゴリー：大学教授に学ぶ正しい化粧品の知識

2022年4月1日

注目の美容成分　コラーゲン合成作用のある抗シワ成分「ノイバラ果実エキス」

バラ科植物ノイバラ（学名：Rosa multiflora 英名：Japanese rose）は高さ2m程度の落葉性のつる性低木で、沖縄以外の日本各地の山野に自生しています。

日本の代表的なノバラ（野薔薇）のひとつです。

ノイバラは、漢方ではエイジツと呼ばれ、果実は偽果ですが、薬用には赤く成熟する一歩手前の少し青みがかったものを採取し、それを乾燥して用います。

通便・利水消腫・活血・解毒の効能があり、脾腫、脚気、瘡毒、月経痛などに用います。

中国ではあまり用いられないが、日本の民間薬として古くより便秘や浮腫の瀉下・峻下薬として知られ、今日でも家庭薬の下剤にしばしば配合されています。

また、腫れ物やざ瘡には煎液による洗浄や冷湿布にも用いられます。

化粧品に配合されるノイバラ果実エキスは、ノイバラの果実から水、エタノール、BG (1,3-ブチレングリコール）、またはこれらの混合液で抽出して得られるエキスです。

化粧品の全成分表示では「ノイバラ果実エキス」と表記されますが、医薬部外品表示名は、「エイジツエキス」です。

ノイバラ果実エキスの成分組成は、抽出方法によって異なりますが、主に、フラボノイド類 (ムルチノシドA,B、クエルシトリン) 、タンニン、カロテノイド (リコピン) です。

肌を引き締めて、キメの整ったお肌へ導き、おでき、にきび、腫れ物に効果があるといわれていています。

また、紫外線による炎症抑制、肌荒れ防止効果があります。

その他に以下の機能性が報告されており、スキンケア化粧品、フットケア商品などに配合されています。

①I型コラーゲンとミメカンの産生促進作用1)

皮下組織のRC（retinacula cutis）と呼ばれる線維構造の減少がたるみの原因で、ノイバラ果実エキスはRCの主成分である「Ⅰ型コラーゲン」と「ミメカン」を増加させた。

②Ⅶ型コラーゲン減少抑制および産生促進による抗老化作用2)

基底膜に存在するⅣ型コラーゲンに連結する形でⅦ型コラーゲンが連なっているが、このⅦ型コラーゲンは真皮側に存在し、真皮から基底膜へ栄養を受け渡す働きをする。

また、生理的老化および光老化のいずれにおいても減少することが知られており、これに伴って皮膚の老化がおこると考えられている。

ノイバラ果実エキスにⅦ型コラーゲン産生促進作用と紫外線（UVB）および炎症性サイトカイン（IL-1β、TNF-α）によるⅦ型コラーゲン減少抑制作用が認められた。

③SLC45A2の遺伝子発現抑制による色素沈着抑制作用3)　

SLC45A2遺伝子の発現を抑制すると、有意にメラニン生合成が低下するが、エイジツエキスにSLC45A2の発現を抑制する効果を見出した。

④イソ吉草酸アルデヒド発生抑制による消臭作用4)

ノイバラ果実エキスには、足の臭いの元であるイソ吉草酸アルデヒドの発生を抑えた。

1.ポーラ化成工業株式会社　ポーラ化成、シワ・たるみの改善、肌荒れの原因等解明②　

https://bhn.jp/special/85701

2.佐藤製薬株式会社（2015）「エイジツエキスにⅦ型コラーゲン産生促進作用を確認」,

http://www.sato-seiyaku.co.jp/newsrelease/2015/150915/

3. ロート製薬株式会社（2017）「美容施術「IPL治療」による美白作用の新たなメカニズムを発見」,

https://www.rohto.co.jp/news/release/2017/1218_01/

4. ロート製薬株式会社（2015）「足臭の原因物質を抑える植物由来エキスとパウダーを発見」,

https://www.rohto.co.jp/news/release/2015/1209_02/

記事

前田憲寿　先生

医学博士

東京工科大学応用生物学部応用生物学科

一般社団法人日本スキンケア協会顧問

特許庁機能性皮膚化粧料調査委員会委員長

九州大学大学院薬学研究科、東北大学大学院医学研究科を経て、資生堂ライフサイエンス研究センター皮膚科学研究所にて主任研究員を務める。2007年に東京工科大学バイオニクス学部教授、バイオ・情報メディア研究科教授に就任。2008年より、同大学応用生物学部、バイオ・情報メディア研究科教授に就任。専門分野は、香粧品科学、皮膚科学、分子細胞生物学、生化学、薬理学など。テレビなどのメディア出演も多数。